親子の絆を描いた沖縄芝居の名作「丘の一本松」。父である鍛冶屋の主が、共に働く息子に厳しく当たりつつ、深く思いをかける。2006年に役者の北村三郎さんが鍛冶屋の主を熱演した

▼亡き師でもあった大宜見小太郎さんの当たり役。かつて本番の3日前に決まった代役を務めたこともある。先の公演では息子の良介役を高宮城実人さんが務め、実の父子の配役が話題を呼んだ

▼普段は物静かな父親だったと高宮城さんは語る。しかし、子どもの時から舞台に立つ息子への指導は「見て覚えろ。できないではなく、まずやれと、厳しかった」という。だが振り返れば「今の自分につながっている。感謝したい」と言葉をかみしめる

▼1945年12月、旧石川市であった戦後初の芸能大会。戦争を生き抜いた喜びを分かち合った。北村さんはその舞台を見て「夢心地」とあこがれた。中学生で俳優を志し東京行きの船に隠れて乗り込み、見つかって送り返されたことも

▼ときわ座、大伸座などで演技を磨き、何でもこなす名脇役として知られた。テレビ、映画でも活躍。若手の指導にも力を注ぎ、台本のウチナーグチ訳など多方面で沖縄芝居を支えた

▼北村さんが亡くなった。82年の生涯を一心に芝居を愛し走り続けた。沖縄の戦後の庶民史とも重なるその歩みは、人々の心の中に生き続ける。(内間健)