米国防総省は、新型の小型核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を海軍が実戦配備したと発表した。低出力の核弾頭を潜水艦に配備するのは初めてだ。

 トランプ米政権には核戦力を増強させている中国、ロシアに対抗する狙いがあるとみられるが、軍拡競争の激化をもたらすだけである。核廃絶を求める世界の流れにも逆行するもので、米国は直ちに配備をやめるべきだ。

 新型の小型核弾頭は「使える核兵器」といわれる。爆発力を抑え、敵国の重要施設へのピンポイント攻撃などを想定して開発された。

 国防総省のルード次官(政策担当)は声明で「米国はあらゆる脅威のシナリオに確実に対処できる」として、ロシアなどを念頭に核配備増強を思いとどまるよう警告した。

 身勝手な論理というほかない。核拡散防止条約(NPT)は、核兵器保有国を米ロ英仏中の5カ国に限定すると同時に、核軍縮のために誠実な交渉を義務付けている。その義務に違反し、NPT体制を形骸化させるものだ。

 現行の核弾頭の爆発規模は約100キロトンに対し、小型核弾頭は約5~7キロトン。広島に投下された原爆は16キロトン、長崎は21キロトンだった。米国は抑止力強化を配備の目的に掲げているが、まやかしというほかない。むしろ核使用のハードルが大きく低下するのではないかとの懸念が拭えない。

 米軍によって広島と長崎に人類史上初めて原爆が投下され、未曽有の惨状をもたらした。非人道的で「絶対悪」の兵器であり、使用することは決して許されない。

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 トランプ政権が2018年2月に発表した米核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に核兵器の使用条件を緩和し「使える核兵器」として小型核の開発を盛り込んだ。

 通常兵器による攻撃に核で反撃する可能性を排除せず、先制不使用も否定している。危険極まりない。

 トランプ大統領は18年10月、米国と旧ソ連で交わされた中距離核戦力(INF)廃棄条約破棄を表明。冷戦終結を後押しし、核軍縮の潮流をつくった画期的な合意だったが、19年8月に失効した。

 米ロ間に唯一残る核軍縮の枠組みは21年2月に期限切れとなる新戦略兵器削減条約(新START)である。トランプ政権は延長に後ろ向きだ。失効すれば軍拡に歯止めをかける手だてを失い、世界が核を巡り不安定化するのは避けられないだろう。

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 日本政府は事あるごとに核保有国と非保有国との間の「橋渡し役」を担うと言っている。だが、核禁止条約に背を向けている。米国の「核の傘」に依存するあまり、トランプ大統領の核政策に追従するばかりだ。NPR発表の際もいち早く「高く評価する」との談話をだしたのは当時の河野太郎外相だった。

 広島、長崎の被爆者の筆舌に尽くしがたい痛苦の思いを裏切るものだ。

 冷戦時代に逆戻りしかねない今こそ、唯一の戦争被爆国として米国の暴走にブレーキをかけるのが日本政府の国際的な責務である。